ルームシェアフレンズ
5.

 ベッド下の幅広い引き出しは、フローリングを鳴らして開かれた。そこに整然と並ぶのは、一様にやや角度を変えながら弧を描き、薄暗い部屋の中でも分かる少しの艶を持つ器具達。
「お前......アマゾンで......」
 はにかんだように笑んだ桜井はそのうちの一つを愛おしげに手に取り、撫でている。
「可愛いでしょ? この子達を使っていつか必ず、宮地さんに奉仕してあげるんだって決めてたんです。って、すいません!」
「お前、謝る気ねぇだろ......」
 宮地自身、玩具を使ったプレイの経験はなく、時折高尾が漏らす「そのうち玩具も」と言う言葉を聞いているだけで、高尾だって買い渋っている態であった。それを、まるで純真無垢なように見えるこの男が、これ程迄に買い揃えている事に、宮地は絶句した。
「名前つけたんです、全部言いましょうか?」
「いや、いい」
 それでも性欲は正直で、桜井が手にした、大小の球体が連なるアナルパールを見れば、宮地はそれだけで腰の辺りが擽られるような気分になる。
「試しに、この子にしましょうか」
 なされるがままM字に開かれた下腿の中央、暫く指でこねくり回した桜井は何の躊躇もなく球体を次から次へと挿入した。
「んァ! ちょっと待てこれックッ......イイかも......」
「そうですか? ボクはこういうの試した事ないから、そう言ってもらえると嬉しいです」
 狭い中でもしなる球の列に、時折敏感な部分を刺激されつつ、ポコポコと出入りする球体に集中力を奪われる。
「アァァァァ、さくら......ちょ、抜いて......アッ! 抜くな入れ......ヒィィ! 抜け! 抜け!」
 何をしても敏感に感じ取ってしまう、蕩けそうな宮地の顔を見るに、桜井は満足気に舌なめずりをする。憧れの人が、悦楽に浸る顔をこれ程近距離で見ることができるとは、思ってもみなかったのだ。
 ずっと憧れていた。やっと一つ屋根の下に手に入れたこの人は、いつの間にか他の男と、こともあろうか隣室で行為をするようになっていた。桜井はベッド際の壁に身を寄せ、息を殺し、少しでも二人のセックスを盗み聞こうとしたのだが、それがセックスであると分かる程の音漏れはしないぐらい、屈強な壁で仕切られている事はつい最近知ったのだ。
 結局、外の人通りが途絶えた隙を見て窓を伝い、隣室の窓から彼らの「最中」を盗み見た。彼らがセックスをしている事には気づいていたが、やはり実際に目にしてしまうと、衝撃は強大であった。
ー宮地さんをボクに結びつけておくためには、差別化が必要だ。
 そこで思い至ったのが、各種玩具の類だった。
「もっと気持ちが良い玩具もあるんですけど、また今度ですね。宮地さん、ドロドロ過ぎてシーツ汚れてきちゃいましたし」
「へ? あ? すまん。あ、涎垂れてたやっべ」
 すかさず宮地の口元を舐めとった桜井は、そのまま宮地をベッドに沈め、既に液体をだらし無く垂れ流す部分に股間を押し当てた。グッと体重をかけつつ、宮地の耳元に口を寄せる。
「もっと色んな事したいでしょ? またボクとえっちな事してくれますか?」
 最後の圧力が掛かれば宮地は切なげな声を漏らし、目を瞑ったまま浅く首肯した。


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