ルームシェアフレンズ
4.

「はぁ?! マジすか、何で桜井にも教えんですか〜!」
「は? 勉強教えるだけだろ。別にセックスするわけじゃねぇんだし。てかセックスだとしてもお前にどうこう言われる筋合はねぇし」
 と言ったところで、宮地は泣きはらした高尾の紅い瞼を想起する。口ばかりが先行する自分の性格を、そろそろ見なおすべきかと、髪をくしゃと掻いた。
「ぜってぇ二人っきりにさせねぇから」
 笑ってあしらおうと開いた口は、何の言葉も紡がぬまま、穴だけをこしらえる。高尾の目は、真剣そのもの。笑い飛ばすなど以ての外といった態だった。

 しかし現実は残酷で、高尾が留守の時間を狙うかのように桜井が部屋を訪れた。
「あ、宮地さんの部屋、散らかって......すいません!」
「いや、それ本当だから」
 しばし部屋を見渡すと、「ボクの部屋でしますか?」と隣室を指差す。俺は一つ頷くと、筆記用具と電卓を手に、桜井の後に続いた。
 小さな折りたたみ式座卓を部屋の中央に広げると、対面に座った桜井は、「この辺が」と数式の羅列を指さす。宮地が自分の側に教本を向けると、桜井はずりずりと膝立ちで宮地のすぐ横に位置をずらした。意識せずとも、いつか見たあざとく妖艶な眼差しを思い出し、体の中心に血液が流入する。
「桜井、近い」
「へ? この方がよく見えるから」
 記入し終えた教本をくるり180度回転させ「ほら」と差し出すのだが、桜井は動こうとしない。
「この方がよく見えるから。宮地さんが」
 矢庭に飛んだ言葉に世界が揺らぐ。ぼんやりとした視界の中で、徐々に近付いた桜井の顔は、唇を掠めて一旦退いた。
「おーいちょっと待ってくれ。何の真似だ?」
 悪戯そうな顔つきで笑みを浮かべた桜井は、目の前にある膝にすっと手を伸ばすと、そのまま宮地を押し倒す。ゴン、強かにぶつける音に、空いた手を宛てがい、静かに撫でる。
「もう一度言う。何の真似だ?」
 意識して通常の声音で言うも、桜井は笑むばかりで手を引かない。そのまま宮地の耳元に口を寄せ、指を絡ませながら消え入りそうな声で囁いた。
「知ってますよ。高尾君とセックスしてる事」
 クスっと笑った桜井はそのまま顔を移動し、唇同士を重ね合わせる。どちらからとも無く舌を差し入れれば、口内で踊るそれらは絡み合い、唾液の音が耳に飛び込んだ。
「高尾君とのセックスは、気持ちいいですか?」
「まぁ、セックスだからな。そりゃ」
 まるで眠たげに瞼を下げる桜井は、自身の二指を口に差し入れると、それを宮地の口内に挿入した。
「もっと吸ってください。高尾君のちんちんしゃぶるみたいに、ぐっちょぐっちょにしていいんですよ」
 唾液が泡立つような音を立てながら言われるがまま、桜井の骨ばった指を強く吸う。満足気に桜井はその指を引き上げ、自身で舐めとった。痛いぐらいに張り詰めた宮地の下半身は、グレーのスウェットに濃色の染みを作っている事に気づいた。
「宮地さん、フェラしてください」
 立ち上がった桜井が履いていたジャージを下着ごと下ろすと、宮地は目を疑った。
「え......桜井......お前......スゴイの持ってんなぁ」
 はっと我に返ったように表情を変えた桜井は例のごとく謝罪する。
「すいません! 宮地さんの顎が痛くなったらすいません!」
「おい、自慢かっつの」
 目の前に揺れる赤黒いそれに口をつけると、奥深くまで含んだ。舌を絡めながら抜き挿しすれば、桜井の膝は時折震える。
「す、すいません、アッ......宮地さんにクイックリリース......しちゃったらんァっ......すいません!」
 口端から笑いが漏れる。その振動すら今は桜井を刺激する一端を担うらしく、さらに膝が震えだす。
「宮地さん、今度は宮地さんの番ですから」


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